治療方針カウンセリング
来院3回目です。
診断で行うこと
- 今後の治療の流れのご説明
- カリエスリスク検査結果のご説明
- 前回作ったよりも更に精密な模型を作るための型取り
1. 今後の治療の流れのご説明
歯が出ているのを治したくて、矯正治療を始める方がいるとします。
単に出ていると言っても、上の歯が出ているのか、下の歯が正常よりも引っ込んでいるのでそう見えるのかの違いで、だいぶ状況は違います。
歯の生えている位置が良くないのか、歯えている位置は良くても生えている角度が悪くて出ているように見えるのか。
それとも歯が植わっている顎の骨自体が原因なのかで、治療方針が大きく違います。
その現状をきちんと把握するために、初診の時にお撮りしたレントゲン写真を基に骨の角度や歯の植立角度を平均と比べ、具体的にデータ化します。(セファロ分析)
その分析結果と、検査時の資料からお作りした歯や顎の位置を再現した模型(マウント模型)を基に、具体的な治療方針を提案し、今後の強制治療の進め方についてお話 します。
2. カリエスリスク検査結果のご説明
前回検査をいたしました、カリエスリスク検査の結果をご説明します。
一生懸命歯磨きをしてもむし歯になってしまう人、方や全然歯磨きをしないのにむし歯にならない人・・・不思議だと思いませんか?
矯正治療を始めると、歯に付ける装置は細かく複雑な構造をしているために歯磨きが難しくなり、むし歯菌は通常の4倍にまで増えるのです。
従って、むし歯や歯周病になるリスクは下げなければいけません。
そこでカリエスリスク検査の結果を基に、矯正中はもちろん、矯正治療後もむし歯や歯周病から歯を守り、生涯ご自分の歯で噛んでいけるようにプログラムを組み立てていくのです。
検査項目
1. 飲食回数
よく「量を分けて回数食べるのではなく、おやつなどは1回で済ませましょう。」や「だらだらと時間をかけて食べないようにしましょう。」などと言われませんか?
なんとなく良くはないということは分かるけれど、なぜお口の中に長い時間物を入れていてはいけないのでしょうか??
それは、お口の中のpHと関係があるのです。
なにかを食べたり、お水やお茶以外の糖分や脂肪分の含まれた飲み物を飲むと、お口の中のpHは下がり、酸性に傾きます。
歯の表面のエナメル質の臨界pHは5.7,その下の層である象牙質は6.2です。
つまり、これよりも下回ると歯は溶け出す為、飲食の度に歯の表面はごく微量に脱灰し、むし歯になりやすい状態になっているのです。
そこへ唾液が出てきて歯に付着した汚れを洗い流し、pHを上げてお口の中を中性に傾け、溶けた表面を再石灰化させるのです。
飲食回数が多い方は、回数を減らすか食後はすぐに歯磨きをしていただく、あるいは水でゆすいだ後にキシリトール100%のガムを噛んでいただくと効果的です。
2. プラークの量
むし歯や歯周病の原因であるプラークは、エナメル質にペリクルという薄い獲得皮膜が形成され、そこにレンサ球菌が定着し、増殖していきます。
プラークは湿重量1mg中に一億個もの微生物が含まれており、そのうち25%以上は 生きた細菌です。
容積比にしてプラークの30%を占める、ゼリー状の構成物なのです。
その他プラークには、糖質(主として、唾液糖タンパクと微生物がシュクロースを基にして合成した菌体外多糖類ムタン・デキストラン等として存在)・脂質・唾液・歯肉滲出液・飲食物に由来する様々な物質が含まれています。
白色や黄白色でネバネバしたあの汚れは、色々なものが含まれている有機性の付着物で歯ブラシでこすると落とすことができますが、うがいだけでは落とせません。
そして、プラーク中の微生物と菌体間質が石灰化してしまうと(つまり、磨き残した汚れが落とされずにずっと付いたままになっていると)歯石という沈着物になり、うがいではもちろん歯ブラシで落とす事ができなくなってしまいます。
そうなると、歯科医院で専用の器具や機械を使わないと落とせません。
磨き残しの多い方には正しい磨き方を覚えていただいたり、汚れを効果的に落とすことのできる超音波ブラシやデンタルフロス・歯間ブラシなどの補助的な器具をおすすめします。
お口の中の3大不潔域の1つである歯と歯の間は、歯ブラシではなかなかキレイにすることができないので、毎回補助器具を使うことをお勧めします。
3大不潔域
- 歯と歯の間(歯間隣接面)
- 奥歯の溝(臼歯の裂溝)
- 歯と歯ぐきの境目(歯頚部)
3. 唾液の量・唾液のpH
唾液は天然のむし歯予防薬です。
唾液が出ない・あるいは量が少ないとむし歯になるリスクは上がり、むし歯になりかけている歯に至っては進行が進んでしまいます。
また、免疫抗体であるリゾチーム・ペルオキシターゼ・ラクトフェリンなどによる抗菌作用があり、プラークの形成・発育を抑制します。
一般的に、エナメル質の臨界pHは5.5?5.7ですが、象牙質・セメント質(歯ぐきの下に埋っている歯面)・幼若永久歯(歯えて間もない永久歯)・乳歯の場合は臨界pHは5.7?6.2程度とされ、歯質によって若干異なります。
唾液中の成分HCO3 ̄(重炭酸塩系)85%とHPO24 ̄(リン酸塩系)15%が、お口の中のpHを高めてエナメル質と象牙質の再石灰化を促進させます。
その際唾液のpH高ければ高い程、お口の中が早く良い環境になるのです。
飲食回数の項目でも挙げましたが、食後や唾液の分泌量が低下する寝る前はキシリトール100%配合のガムを噛む事をお勧めします。
噛む事による刺激やキシリトールの甘味による刺激によって唾液の分泌が促され、むし歯予防の効果が上がります。
4. う蝕菌の比率
お口の中には300?400種類の細菌が存在していますが、その中の細菌(ミュータンス菌・ラクトバチラス菌)の感染によってむし歯は起こります。
むし歯菌は飲食した食べ物から栄養を取り、酸を出して歯を溶かしていきます。
そのむし歯菌の数が少なければむし歯にはなりにくく(存在しなければむし歯にはなりません)多ければなりやすいのです。
今回の検査では、ミュータンス菌と、直接の原因にはならないがミュータンス菌との相互作用のある乳酸桿菌の比率を調べています。
比率が多くリスクの高い方には、矯正治療に入る前に3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリーシステム)という処置を行っています。
PMTC(プロが機械を使って行う歯の細かい部位までのクリーニング)を行った後、歯列に合わせて作られたトレーに高濃度の抗菌剤を流し、歯に作用させます。 そして、リスクが下がったら装置を付けます。
う蝕菌の比率が高い方には、引き続きご自宅でフッ素を使用していただき、今後のむし歯予防を徹底させることをお勧めしています。