不正咬合の予防
歯列は、左右・上下の歯のせめぎ合い、内側から押す舌の力、外側から押える頬と唇の力のバランスによって保たれています。
不正咬合(咬合異常)は
- 個々の歯の位置異常(歯列内の正常な位置からずれている状態です)
- 歯列弓形態の異常(主に、幅の狭くなっている狭窄歯列弓のことです)
- 上下顎歯列弓および上下顎関係の、それぞれ上下的・前後的・左右的異常
などに分類されます。
不正咬合の原因は不明のことが多いのですが、臨床的には習癖と関わりがあるとされています。
1. 不正咬合の状態を表す一般的な用語
- 上顎前突
上下の前歯の前後的な間隙で、7〜8ミリ以上もあるような不正状態をいいます。 - 上下顎前突
上下の骨ないしは前歯が、外側に傾斜しているような咬合状態をいいます。 - 下顎前突
上下の前歯の咬合関係が反対になっているものをいいます。 - 犬歯低位唇側転位
八重歯のことです。 - 開咬
上下の歯が咬合していない状態をいいます。一般的には前歯にあるものをいいます。 - 叢生
主に前歯が数歯にわたって唇側舌側と交互に転移し、隣在歯との関係に乱れが生じている状態をいいます。 - 切端咬合
上下の前歯が、互いにその切端(切縁)で接する咬合状態をいいます。 - 過蓋咬合
前歯の垂直的被蓋が非常に深い状態にあるものをいいます。
下の前歯が2/3以上被ってしまうようなものをいいます。 - 正中離開
上下の真ん中の歯(1番・中切歯)に隙間が開いている状態をいいます。 - 対称捻転
上の中切歯が左右で対称的にねじれているものをいいます。
特に内側(近心)にねじれたものを翼状捻転といいます。
2. 習癖
言葉を発する時やものを食べている時、舌は色々な動きをし、歯を触っています。
ところが、何もしていない安静時にまで舌で歯を触るような癖がある場合や、唇の力が弱い場合には、バランスが崩れて不正咬合になる原因となってしまいます。
普段口を開けて呼吸をしていたり、舌で歯を触っていたり、飲み込む時に舌で歯を押してしまうのはよくない癖(悪習癖)です。成長発育により咬合・発音・顎骨の形態に影響を与えるため、早期指導や治療が必要になるのです。
3. 舌癖のチェック
舌を出すという動作は乳幼児期には通常行っており、だんだん減っていきます。
6歳前後から永久歯の萌出が始まり、口唇や顔面機能が発達してきます。
運動機能や知的面での発育も見られ、正常な咀嚼(噛む)・嚥下(飲み込む)・舌の安静位(スポットと呼ばれる、上顎の舌をおいておくべき位置)を獲得していきます。この時期を過ぎても舌を出す動作(舌癖)が引き続き起こっている場合は注意し、改善していく必要があります。
主な舌癖のチェック項目を以下に挙げます。
- 口を開けて物を食べる。
- 食べ方が早い。
- 食べこぼしが多い。
- 一度にたくさんほおばる。
- 食事中、お茶やお水などの水分を多く取る。(噛まずに流しこむ)
- あまりよく噛んでいない。
- 硬い食べ物を食べない。
- 食べ方が遅い。
- 舌を出して食べ物をむかえにいく。
4. 舌癖の起こる原因
以下のことが挙げられます。
- 口を開けて呼吸をする。(舌が下の歯の後ろなど、低い位置にある。)
アレルギー性鼻炎,慢性鼻炎,蓄膿症,扁桃肥大,アデノイドなどによる場合がある。 - 舌小帯が短い。(上顎につきにくい。)
- 指しゃぶり(前歯に隙間ができ、舌が出やすくなる。)
- 遺伝。(顔かたちや歯並びにより、舌癖が出やすいタイプがある。)
- 幼児性嚥下の延長。(先ほどもお話したように、乳幼児が舌を出すという動作は通常起こることであり正常なのですが、6歳を過ぎても行っている場合は悪習癖になります。)
また、噛む力や歯列を押える唇と頬の力・体癖や姿勢もコントロールする必要があります。
噛む力は正しい嚥下の助けになりますし、唾液の分泌によってむし歯の予防にもなります。
5. リップトレーニング
舌癖のある人は、口を開けていたり習慣性の口呼吸をしていることが多く、口輪筋や頬筋の力が弱いため、トレーニングが必要になります。
常に口が開いている人は唇が乾いています。
上唇は短く跳ね上がっており、下唇が垂れ下がっているのが特徴です。
唇を閉じるトレーニングに必要な道具は、割り箸などのスティックです。
奥歯を噛み合わせて上下の唇の間にスティックをはさみ、唇を15分以上閉じます。
スティックをはさんでいるのが難しい場合は、油のついているクッキングペーパーをはさむのも効果的です。(普通の紙では、口が開いていても唇に紙がくっついてしまうので効果的ではありません。)
TVを見たり本を読みながら、気軽に取り入れられます。
6. 体癖
主に睡眠時の態癖と頬づえを注意する必要があります。
- 勉強中・TVを見る時などに頬づえをつかない。
- 寝転んで頬づえをつかない。
- うつ伏せ寝をしない。
- 横向き寝でも良いが、くるまって寝ない。
枕を下顎に当てて、一方的に押し込まない。
顎に手を当てるなどしていつも同じ方向で寝ない。 - 片方だけの噛み癖をつけない。(顎が紙癖のある方向へずれてしまいます。)
- 一方向だけを向いて食事をしない。(顎がそちらにずれてしまいます。)
- いつも同じ方向を向いている癖をつけない。
- 舌を出す癖、はさむ癖、唇を噛む癖、巻き込む癖なども噛み合わせを悪くします。
- 上の歯が出ている方や、舌を歯と歯の間に挟む癖のある方は吹奏楽器を吹くと症状が悪くなる場合があります。
7. 不正咬合を予防するためには
専門医のチェックを受けることをお勧めします。
正しい飲み込み方(嚥下)や舌の動きをマスターし、噛む時に使う筋肉(咬筋)・口腔周囲筋に力をつけ、安静時の正しい舌の位置を習慣づけられるようにトレーニング(筋機能療法)を行うことが効果的です。



