矯正治療シュミレーション
矯正する前の歯並びを模型上で1本1本切り離して矯正後の理想的な歯並びに並べなおした模型のことです。矯正治療後の状態を確認することができます。当クリニックでは、患者さんの期待に応えられるように専属の歯科技工士が気合いを入れて製作します。
Set up模型には3つの目的があります。
1つめは歯の移動量、抜歯の有無を判断することです。もちろんSet up模型だけで判断することはできませんが、初診時のアンケート(口元を引っ込めたい、噛み合わせをよくしたいなど・・・)、初診または検査の際に撮影したレントゲン写真、診断の記録をもとにしながらSet up模型で再現することにより、治療プランを再確認することができます。
2つめは患者さんご自身の目で矯正後の状態を確認していただくことです。マウント模型(今の口腔内の状態)とSet up模型(矯正後の状態)を見比べるとどの程度変化するのかを目で見て確かめることができます。また、どうして歯を抜くことになったのか、インプラントを打つ必要があるのかなど治療の内容を理解することもできます。
3つめはブラケットという歯を動かす装置をポジショニングするために使います。ポジショニングはブラケットを歯の正しい位置につけるために行なう作業です。このポジショニングについては下に詳しく書いてあります!(読んでみてください)
自由が丘矯正歯科クリニックでは2002年からすべての患者さんに安全で安心できる治療を受けて頂くためにSet up模型を製作しています。
それでは、そのこだわりの製作方法をご覧ください!
※当クリニックでは患者さんにSet up模型についてより理解していただくために1から完成までの全工程を一人一人写真に撮り記録しています。
1. Set up模型をパナデント咬合器にマウントします。
えっ?!Set up模型もパナデント咬合器にマウントするの??と思うかもしれませんがここがpointです。“咬合器のこだわり”でお話したようにパナデント咬合器はより正確に患者さんの口腔内を再現することができます。もし、Set up模型を簡易な機能しかもたない咬合器にマウントして作ってしまったら・・・考えるだけで恐ろしい!!と思いませんか??患者さんを矯正後の理想的な歯並びへ導くためには口腔内をより再現できるパナデント咬合器にマウントすることが大切なのです。
※当クリニックでは歯科医師が採得したシリコン印象は外注先(ASOインターナショナル)に提出し、Set up模型の準備をしていただいています。パナデント咬合器にマウントして、模型を1歯ずつ分割した状態で自由ヶ丘歯科クリニックの歯科技工士にバトンタッチします!
2. 外注先から送られてきたバラバラの模型を患者さんの今の口腔内の状態に戻していきます。
これは正しくマウントされているかどうかを確認するため、歯をどのくらい移動させるかを調べるために大切な作業です。ユーティリティーwaxという粘り気のあるwaxで固定します。その際、模型に引いてある歯軸の線を基準にします。
※歯軸とは・・・1本の歯の中央を通る仮想の線です。この歯軸の傾きは配列の際にとても重要な要因の1つになります。
3. 今の口腔内の状態に復元できたら、マウント模型と見比べます。
マウント模型はあらかじめシリコンバイト(検査時に採る緑色のバイト)を介在させて模型が正しい位置に装着されているかどうかを確認してあります。Set up模型もマウント模型と同じ中心位でマウントされていなければいくらきれいに並べ直しても患者さんの口の中を再現していることにはなりません。
4. いよいよSet upのスタートです。
普段、患者さんの口腔内を直接見ることができない技工士でも、カルテの中を見ると患者さんのことがわかってしまう!?カルテにはたくさんのお口の中情報がつまっています。
1番始めに目を通すのが初診時に書いて頂いたアンケートです。最終的にこうなりたい!ここを治したい!という希望を把握し、その状態に近づくようにします。次に、正中の位置、前後的な位置(歯列を広げるのかい否か)、Opeの有無、抜歯部位など、診断の記録に目を通します。正中はどのくらいずれていて正しい位置はどこなのかを歯科衛生士が調べます。
※正中とは・・・顔を左右に分けたちょうど真ん中です。(図をご覧ください)
それでは配列していきましょう!
まずは1番中心の歯(中切歯)を正中にあわせてならべます。このとき、上の歯と下の歯は2〜3mm重なるようにします。もしも、上の歯と下の歯の間に隙間があると口で呼吸する事になり・・・・・・・・・などの原因になってしまいます。前歯の噛み合わせの状態を専門的にはオーバーバイト、オーバージェットと表現します。オーバージェット(=水平的被蓋)は歯の突出の度合い、オーバーバイト(=垂直的被蓋)はかみ合わせの深さの度合いのことです。また、上の歯と下の歯の間にすき間もなく重なりもない状態を切端咬合と呼びます。切端咬合は食べ物をしっかり噛むことができなかったり、歯に力をいれることができないので、顎に負担がかかってしまいます。
正常な噛み合わせの人は、このオーバージェット・オーバージェットが2〜3mmなのでSet up模型も同じようにならべています。
5. 次は臼歯部を並べます。前歯は審美性を重視するのに対して、臼歯部は噛み合わせを重視します。
下の図を見ていただくと分かると思いますが、歯は上の歯と下の歯でしっかりかみ合うような形をしています。どこに噛みこむのかも決まっているのです。このかみ合わせは1歯対2歯(咬頭対辺縁隆線)の関係といいます。上の歯1歯に対して下の歯が2歯でかみ合います。
ここまで配列した状態で患者さんに1度来院していただきます。Set upチェックの時間です。院長から今後の治療についてお話があります。無事に患者さんに見ていただいたSet up模型は、再び技工士の元へ戻ってきます。そして、まだ手をつけていない半分をならべます。なるべく、左右対称に咬合平面を変えないようにしています。
※咬合平面とは・・・歯の配列によって決定される仮想平面です。(下図参照)
6.配列がすべて完了したら、パラフィンwaxで歯ぐきを形成します。
パラフィンwaxはユーティリティーwaxのように粘り気がなく、冷めると固くなるので歯の模型を固定するのに適していますが、熱して冷めたときに収縮するのでこまめに模型を咬合器に戻して位置にずれが無いかを確認しています。このwaxは検査の際に採るwaxバイトと同じwaxです。
Set up模型はこれで完成です。
しかし、Set up模型の目的は最終的な治療後を予測するための歯の移動量や、治療プラン
の目安にすることだけではありません。もうひとつ、大切な役割を担っているのです。そ
れが次にお話しする『ブラケットを歯の正確な位置に装着するための基準』です。
そのために行なう作業を“ポジショニング”といいます。このポジショニングは治療を進
めていく上でとても重要です。
その重要性を理解していただくためにも、ブラケットを歯につけるbonding方法について説明します。
当クリニックではbonding方法は5年前からたびたび改良、改善されてきました。その軌跡をたどりながら現在行なっているポジショニングの意味をお伝えしたいと思います!
5年前は・・・
ダイレクトbonding(ブラケットを歯に直接bonding(接着)する方法)を行なっていました。現在行われている矯正治療で最もポピュラーなブラケットの付け方です。大学病院ではこの方法で99%以上の患者さんを治療していました。
患者さんの口腔内でブラケットをつける位置を決めて、歯科医師が直接ピンセットなどを使ってブラケットを歯にbondingします。この方法でbondingしている頃は、Set up模型も作製していませんでした。この方法が悪いというわけではないのですが、目分量で位置を決めているので歯科医師によって多少の差があり、ワイヤーなどもその場で調整しなければならないという欠点があります。残念ながら確実性は100%とは言えません。
3年前は・・・
インダイレクトbonding(1)(間接的にbondingする方法)に変わりました。
5年前に行なっていたダイレクトbondingとは違い、いわば間接的にブラケットを歯に装着します。一度、患者さんの口腔内模型上でブラケットをつける位置を決め、その位置がずれないようにコアを製作します。
※コア : 誰でも、模型につけた位置と同じ位置にブラケットを装着することができるようにする、歯のトレーのようなものです。(コアについては下にくわしく載っています)
コアをもとに、患者さんの口腔内にブラケットを装着すると模型と同じ位置にブラケットが装着されるのです。ダイレクトbondingよりもずれが無く、ゴールに向かってより短期間で正確な治療が可能になりました。
3年前の時点では、Set up模型(矯正終了後のゴール)ではなくマウント模型上(矯正前のかみ合わせ)でブラケットの位置を決めていました。この方法は患者さんの口腔内でブラケットをつける位置を決める方法に比べて、正確さが増しますが、最終的なかみ合わせにするまでには付け直しや多少のワイヤーの調整が必要になります。
近年は・・・
インダイレクトbonding(2)
それを踏まえて近年ではSet up模型上でポジショニングという作業を行なってからコアを製作し、ブラケットを歯に装着する方法を取り入れています。矯正終了後はブラケットに通っているワイヤーのラインが同一平面状に並ぶことが望ましいので、その先に並んだ時を想定し、Set up模型上でポジショニングを行ないます。それでは、実際にポジショニングはどのような手順で行なっているかを見ていきましょう!
<ラビアル(レギュラー・セラミック)の場合>
- 馬蹄形をしたプリフォームワイヤーをSet up模型の歯列に沿うように曲げます。
※ワイヤーは断面が0.0215×0.028inchのステンレス製でTP Orthodontics社のものを使用しています。断面が長方形になっています。これはブラケットのスロット部分0.022×0.028inchと同じ形をしていてレクタンギュラーといわれています。 - 前歯部のブラケットをエラスティックモジュールと呼ばれるカラーゴムでワイヤーに一つ一つとめていきます。このとき、ワイヤーが曲がったりしないように慎重に作業します。左右6本の前歯で一番豊隆(ふくらみ、でっぱり)がある犬歯を基準にして、ブラケットと模型の隙間が均一になるようにブラケットがついた状態のワイヤーを曲げなおします。
- 前歯部が決まったら、今度は臼歯部のブラケットをゴムでとめます。前歯部と同じようにワイヤーを曲げなおします。ブラケットが歯茎に当たらないように、ブラケットと歯茎の間は1mm以上あけます。ブラケットが歯ぐきに当たると、歯ぐきが炎症を起こしたりします。歯の大きさなどによりどうしても当たってしまう場合はブラケットを少し削って調節します。この作業をするだけでもワイヤーは少し、ゆがんだり、かたついたりしてしまうので、一度すべてのブラケットをワイヤーから外し、かたつきやたわみを直します。
- かたつきが直ったら、ワイヤーにブラケットを戻します。
- Set up模型にポジショニングするためのワイヤーの基準になる線をひきます。(図参照)この位置にワイヤーが来るのがもっとも理想的です。そして、ブラケットは歯の中心部につけます。
- Set up模型と作業模型にレジン分離材を塗ります。レジンはここではトランスボンドのことで、歯とブラケットを接着するための接着クッションのような役割をします。レジン分離材には模型とレジンがくっついて離れなくなってしまうのを防止する役割があります。
※作業模型とはSet up模型分割前の状態を複写したものでSet up模型の歯と同じ位置にノッチという溝が掘られています。 - ブラケットに触れないようにブラケットのベース(接着する部分)面をアセトンで拭いていきます。アセトンには油分を取り除く効果があります。ブラケットのベース面に油分や汚れがついているとトランスボンドがはがれてしまうので、このアセトンは2度拭きをしています。
- ブラケットのベース面が金属の場合はメタルプライマーを塗布します。メタルプライマーは金属とトランスボンドの接着剤です。
- 模型のレジン分離材、ベース面のメタルプライマーが乾いたらSet up模型とブラケットのベース面にトランスボンドを盛ります。後でこのブラケットを作業模型に貼り付ける作業があるので、そのとき基準になるノッチには確実にトランスボンドを盛ります。
- ブラケット付きワイヤーを模型に圧接します。その際、【8.】で引いた基準線を参考にします。ブラケットが歯の中央に来るようにして、トランスボンドは過不足無いようにします。
- 照射機でトランスボンドを固めます。トランスボンドは光重合といって光(青)を照射することによって固まります。ここでポジショニング完了です。青い光は目にあまりよくないので直接見ないように照射機には半透明でオレンジ色の板がついています。しっかり光を当てて、トランスボンドが固まったらポジショニング完成です。
現在は・・・
現在では、1度Set upした後に再Set upを行なっています。
※再Set upとは、抜歯が必要な患者さんの場合、抜歯部位の周りの歯の後戻り分(歯は力をかけて動かした後、元の位置に戻ろうとします)を考えて歯の移動量を多めに設定して並べ直すことです。この作業はポジショニング前に行ないます。再Set upした状態でポジショニングをすれば、先に歯の後戻りのことも考えてbondingすることができます。
インダイレクトbondingのお話をしているときに、“コア”について出てきましたが、コアの材料も3年前から変わってきました。正確性、治療時間のこと、患者さんの負担がより少なくなるように改善されているので、紹介したいと思います。
<メモジルコア>
ゼリーのような半透明で柔らかいコアです。このコアは、一度にブラケットをつけることができる、ゴム状なのでコアの着脱は容易である、という利点がありますが、メモジルコアを使って歯にブラケットを装着するまでの期間が長くなるとわずかなズレが生じるということが起こってしまいます。そこで、このメモジルコアを使うときには、抜歯の前に装置をつけるか、抜歯から1週間以内に装置をつけるように予約を取ります。
<ヒロコア>
ヒロコアは即時重合レジンという硬質レジンで作ります。即重レジンは粉と液を混ぜると硬化します。このコアはメモジルとは違い、1歯1歯個別につくり、1度のきりの使い捨てタイプです。ポジショニングしたあとからの製作方法をご紹介します。
まず、ポジショニングワイヤーにピンク色(半透明)のレジンで維持をつけます。この維持はブラケットが歯から外れてしまった場合などに、もう一度コアを作製する時のためのものです。(写真を参考にしてください。)
- ワイヤーに維持をつけたら、ワイヤーからブラケットをすべて取り外し、ノッチあとは削らないように形態を整えます。
- 作業模型にブラケットを1歯1歯、対合と当たるかどうかを確認し、ぶつかる場合はベースを削って当たらないようにします。作業模型にレジン分離材を塗布しておきます。
- ブラケットを作業模型にのりで貼り付けます。歯並びがでこぼこしていて作業模型に貼れない場合はSet up模型に貼り付けます。
- のりが乾いたら、ピンクの即時重合レジンを盛ります。この部分がコアです。
- 形態修正する。このとき、ノッチを削ります。
- マジックでコアに歯式を記入して完成です。
このヒロコアはメモジルコアとは違い、硬いのでブラケットを歯の正確な位置につけることが可能になりましたが、実際に患者さんの口腔内につけたあとコアとブラケットの間を削って切り離す作業をしなくてはなりません(もちろん、歯は削れないエンジンを使います。)。そのため、診療時間が長くなり患者さんへの負担が大きくなります。その問題点を改善するために、これからはCRCコアを製作することになりました。
<CRCコア>
1歯1歯であり、硬い素材で作られていますが、ヒロコアとの大きな違いはコアを削る必
要が無いというところにあります。そのため、診療時間の短縮、患者さんへの負担も軽減
されます。耳元でコアを削る音がしないのもうれしいところです!



